担当のケアマネさんへの挨拶も済んでいる。当院の取り組みも伝えた。それでも紹介の依頼が来ない。なぜなのか、手応えがつかめない。そんな状態に悩んでいる先生も多いと思います。
この状況が続く原因は、ケアマネへの伝え方や接触頻度の問題ではない場合が少なくありません。ケアマネからの紹介が機能するかどうかは、その前に、今の患者さんやご家族が医院に不満を抱えていないかどうかで決まります。患者さんやご家族は、院長やスタッフには直接言わない。でもケアマネには、その不満が届いていることがあります。
私は医療法人で訪問歯科を立ち上げから統括した経験から、信頼構築の順序と、最初に確認しておきたいことをお伝えします。
訪問歯科の新規依頼でありがちな「ズレた努力」
新規依頼を増やしたいと考えたとき、多くの院長先生が真っ先に動くのは、ケアマネや施設への挨拶・アプローチです。行動力があること自体は大切です。
ただ、信頼関係が出来上がっていない状態——あるいは患者・家族側に不満が蓄積している状態——でアプローチしても、紹介にはつながりにくい。問題はアプローチの量や質より前に、その順番にあるのです。
ケアマネへのアプローチの前に、まず確認すべきこと
ここで見落とされやすいポイントがあります。
ケアマネや施設への働きかけは、今診ている患者さん・ご家族に不満がない状態でこそ機能します。患者・家族側に不満が残っている状態でどれだけケアマネジャーにアプローチしても、紹介にはつながりません。これは順序の問題です。
なぜか。患者さんやご家族は、先生やスタッフへの不満を直接伝えることをためらいます。「お世話になっているから言いにくい」「こんなことを言ってよいのかわからない」——そうした遠慮から、診療の場では何も起きていないように見えることがあります。
けれど、その不満は担当のケアマネには届いていることがあります。何気ない会話の中で、少しずつです。
医院側が「主訴は解決したし、何も言われていないから問題はないはず」と感じていても、ケアマネジャーにはすでに違う情報が入っている。この構造が見えていないまま、ケアマネジャーへのアプローチばかり強めても、手応えは変わりません。
先にすべきことは、「今の患者さん・ご家族が本当に満足しているか」を確認することです。
ケアマネ・施設へのアプローチで乗り越えたい3つの壁
既存患者さんから実績につなげた後、次の段階でケアマネや施設へのアプローチに進みます。ここで多くの院長先生がぶつかる壁があります。
壁1 「質の高い診療をしていれば依頼が来るはず」
どんなに良い診療をしていても、その価値が相手に伝わらなければ紹介にはつながりません。診療の質と、伝える行動は別物です。
壁2 「向こうから声をかけてくれるだろう」
介護の現場では、医師や歯科医師は話しかけづらい存在として見られていることがあります。先生側から「こんにちは」と声をかけるだけで印象が変わることもあります。多職種連携の入口は、意外とその一言だったりします。
壁3 「介護職種とどう関わればよいかわからない」
歯科医師も介護職員も、利用者さんの生活の質を高めたいという点では同じ方向を見ています。この一点に気づけると、関わり方の入口が見えやすくなります。
訪問歯科の新規依頼で問われる視点
ケアマネや施設職員が先生を評価するとき、見ているのは治療技術だけではありません。「この先生は利用者さんのことをよく見てくれているか」という姿勢です。
訪問歯科では、口腔内だけで完結しない視点が求められます。その方がどう生活しているか、何を大事にしているか、家族や介護環境がどうなっているか。そうした背景まで見ようとする姿勢が、介護関係者からの信頼につながります。
社交的でなくても問題ありません。患者さんの診療と生活に向き合う姿勢そのものが、信頼構築の土台になるからです。
先生の医院では、当てはまることはありますか?
- ケアマネへの取り組み紹介やアプローチを続けているが、紹介につながっていない
- 既存患者さんやご家族に訪問歯科の案内をしていない
- 患者さん・ご家族が今の医院に満足しているかどうかを確認したことがない
- ケアマネジャーとの接点が、紹介をもらうときだけになっている
- 「良い診療をしていれば依頼は増えるはず」と考えている
2つ以上当てはまる場合、信頼構築の順序を見直すことで状況が変わるかもしれません。
まとめ
訪問歯科の新規依頼は、ケアマネや施設への働きかけの量ではなく、「誰に・どの順番で信頼されるか」で決まります。
既存患者・家族の満足が前提にあり、その上で初めてケアマネや施設へのアプローチが機能します。この順番を飛ばすと、どれだけ動いても結果は変わりにくい。
「患者さん・ご家族は先生には言わないけれど、ケアマネには伝わっていることがある」——この構造を理解することが、最初の一歩です。