初対面のケアマネさんと顔を合わせ、挨拶も一通り済んだ。雑談も少しした。けれど、その先に何を話せばよいのかわからず、気まずい沈黙だけが流れていく。そんな場面を経験したことのある先生もいらっしゃると思います。

その原因は、話し方やコミュニケーションスキルの問題ではありません。ケアマネジャーと何を共有すべきかが見えていない。まずはそこが問題の出発点です。

私自身も人見知りで、訪問初期にはこの苦しさを何度も経験しました。そこから抜け出せたのはトークテクニックを身につけたからではありません。その経験から、ケアマネジャーとの関係構築に本当に必要なことをお伝えします。

事業所への挨拶が機能しない理由と、「紹介が止まる」の正体

ケアマネジャー事業所への挨拶回りをしてみたが手応えがない、という声はよく聞きます。ケアマネジャーは歯科医師を相手に緊張していることもありますし、急な飛び込み挨拶だけで関係の入口ができることは多くありません。少なくとも、これだけで紹介が動き始めると考えない方がよいと思います。

また、「紹介が止まった=信頼を失った」と受け取ってしまう先生もいますが、そこにも一つの構造があります。ケアマネジャーが担当している要介護高齢者の中で、口腔機能に課題があり、なおかつキーパーソンが歯科訪問診療を受け入れられる状態の方は、思っているほど多くありません。

ですから、紹介が止まった理由が、単に「今は該当する患者さんがいないだけ」ということも十分にあります。この構造を知らずに焦ると、的外れな動きに時間と労力を使ってしまいます。

本当に注意すべきリスクは「紹介後の結果」

紹介が一定のところで止まること自体は自然です。ただ、本当に注意すべきなのは別の場面です。患者さんを紹介してもらったあと、診療の結果がケアマネジャーの期待やイメージと大きくずれてしまう場面です。

ケアマネジャーは、家族キーパーソンに段階的に働きかけながら、ようやく訪問歯科につないでいます。ですから、その後の結果がうまくいかなかったとき、ケアマネジャーの側には「自分がつないだことで家族との信頼に傷がついた」と感じる人もいます。

もちろん、ケアマネジャーや家族が期待した通りの結果が毎回得られるわけではありません。歯科医療には限界もありますし、どうしても避けられないこともあります。ただ、こうしたズレが起きたときに差が出るのは、最初の段階で「ケアマネジャーはこの患者さんにどうなってほしいと思っているのか」を把握しているかどうかです。

その思いを理解した上で診療計画を説明する院長と、その情報を持たずに診療へ入る院長とでは、ケアマネジャーとの信頼関係の深さは大きく変わります。

沈黙から抜け出した理由——実体験と振り返りチェックリスト

私自身、訪問を始めた頃は、ケアマネジャーが同席している場面で何を話せばよいのかわからず、沈黙が流れる時間を何度も経験しました。

しかし、何百人ものケアマネジャーと話す中でわかったのは、沈黙から抜け出すのに必要なのは話術ではないということでした。ケアマネジャーという存在を理解したときに、初めて「何を話せばよいか」が見えてきたのです。

自分が何を話すかを考えるのではなく、ケアマネジャーは訪問歯科からどんな情報を受け取ると安心するのか、どこに信頼を感じるのかが見えてくると、自然と会話の中身が変わります。人見知りの私でも、視点が変わることで動き方は変わりました。

ここで一度、ケアマネジャーとの関係を振り返ってみてください。

  • ケアマネジャーとの話があまり続かず、コミュニケーション力の問題だと感じた
  • ケアマネジャーから紹介を受けた後、経過報告やフォローを省略したことがある
  • 「この患者さんにどうなってほしいか」を初回に確認していない
  • 「紹介が止まった」ことを、信頼や相性の問題だと解釈していた
  • ご家族などのキーパーソンとのやりとりに集中しすぎて、ケアマネジャーには結果だけを伝えていた

1つでも当てはまる場合、スキルより先に、ケアマネジャーの視点への理解を深める余地があるかもしれません。

ケアマネジャーと「同じ生活目線」で話せる院長が信頼される

ケアマネジャーから「また話を聞きたい」と思ってもらえる院長に共通しているのは、話が上手なことではありません。ケアマネジャーが要介護高齢者の生活全体を見ている専門職であることを理解し、生活全体の目線に合わせて物事を見ていることです。

「歯の治療をしに行っている先生」と「口腔機能の管理を通して生活全体に関わっている先生」とでは、ケアマネジャーからの見え方はかなり違います。

口腔ケアや口腔リハの手技は学べます。ただ、その前に必要なのは、「なぜこの方に今それが必要なのか」を生活背景ごと捉えようとする視点です。難しい理論の話ではなく、外来患者と訪問患者では前提条件が大きく違う、という理解から始まります。

医療も介護も、最後は「心」

コミュニケーションスキルが高い先生は確かにいます。場の沈黙を自然に埋められる先生もいます。ただ、雑談がうまいことと、ケアマネジャーから深く信頼されることは同じではありません。

ケアマネジャーが見ているのは、先生がその患者さんにどう向き合っているかです。医療も介護も、最後は「心」だと私は思っています。患者さんへの向き合い方は、想像以上に周囲へ伝わるからです。

そして、その「心」をケアマネジャーや介護職種に伝わる形にしていく方法があります。これは性格や話術の問題ではなく、視点の持ち方と伝え方の問題です。

まとめ

ケアマネジャーに「また別の利用者さんも診てもらいたい」と思ってもらえる院長は、話し上手な先生ではありません。ケアマネジャーが見ているものを理解し、患者さんへの向き合い方が自然と伝わっている先生です。

コミュニケーションスキルを磨く前に、まずケアマネジャーが何を見ているかを理解すること。その理解が、話す内容を変え、関係を変えていきます。