訪問のルートをもっと効率化したいのに、ご家族などのキーパーソンや施設側から時間の制約が出てきて思うように組めない。空いた時間帯をスタッフに任せたものの、なかなか埋まらず、翌月も同じ状態になっている。どこから手をつければよいかわからない。そんな先生も多いと思います。

歯科訪問診療において、ルート管理は診療効率にも収益にも直結します。ですから、非効率をそのままにしておくことはできません。

ただ、非効率なルートの原因として、ご家族などのキーパーソンや施設の要望、あるいはスタッフの対応に意識が向きやすい一方で、本当の問題は別のところにあることが多いです。多くの場合、課題は「受動的に積み上がったスケジュール設計」にあります。

私は前職で訪問歯科の立ち上げから拡大、現場運営に関わってきました。その経験と、相談の中で見えてきた「スケジュールが崩れる医院に共通する構造」を整理します。

「受動性」の正体——スケジュールが崩れる根本

「いつがいいですか?」から始めている時点で、すでに受動的

スケジュールの問題を振り返ると、出発点はよく似ています。初回訪問時に、患者さんのご家族などのキーパーソンや施設スタッフへ「ご希望の曜日はありますか?」「いつがご都合よろしいですか?」と聞いている——この一言です。

相手の都合を優先しようとする誠実な姿勢から出る言葉ですが、訪問歯科のルート設計という視点では、この段階から受動性が始まっています。これを続けると、同じエリアの患者さんが別々の曜日に散ったり、遠方へ一件だけ飛ぶルートができたりして、後から修正コストが大きくなります。

しかも厄介なのは、これがスタッフの親切心から起きやすいことです。善意で動いた結果、あとから全体が苦しくなる。訪問歯科ではよくあります。

初回訪問時は、実はスケジュール設計の自由度が最も高いタイミングです。この段階で、自院の都合を踏まえた候補日を提示することが、その後の非効率を防ぐ第一歩になります。

情報が止まると「空き」になる

スケジュールの空きは、突然生まれるわけではありません。入院、ショートステイ、中断などを経て、必要な情報が更新されないまま時間が経った結果として現れます。

「入院したまま退院連絡が来ないと思っていたら、いつの間にか施設へ移っていて、別の訪問歯科が入っていた」——これは相談の場で聞くことがありますし、私自身も経験があります。

空きが出た原因を「仕方なかった」で終わらせる前に、情報の流れが止まっていなかったか、中断の理由を把握できていたかを確認します。

見落とされがちな2つの穴

中空き枠の放置

以前は埋まっていた時間帯に患者さんの休止や中断が入り、中途半端な空きができる。この「空き枠」を、どうしようもないものとして放置しているケースがあります。

ただ、そこに新患候補を入れる、前後の患者さんを調整する、別曜日の同地域患者を移すなど、考え始めると手は意外とあります。もちろん本当に動かせないこともありますが、課題として見ているかどうかで結果は大きく変わります。

遠方の往復が、ただの移動時間になっている

遠方の訪問先が孤立し、往復にかなりの時間を使っているケースもあります。その患者さんのために行くこと自体を否定する話ではありません。

ただ、採算や全体効率の観点から見ると、それが機会損失になっていることもあります。そこを「仕方ない」と片づけるのではなく、課題として認識するだけで、ルート統合や担当変更、周辺紹介の促進といった選択肢が見えてきます。

スタッフと院長では、気になるポイントが違う

スケジュールに空きが出たとき、スタッフが向かいやすいのは「この空きをどう埋めるか」という目の前の課題です。これはスタッフとして誠実な反応です。

ただ、経営者である院長が向き合うべき問いはもう一段深いところにあります。

  • なぜこの空きが生じたのか
  • 今後も同じことが繰り返されるのか
  • スケジュール設計として改善できることはないか

この「気になるポイントの違い」は、どの場面でも経営者と従業員の間で起きます。だからこそ、スタッフへ「もっと上手く管理してほしい」と求めるだけでは改善しにくいのです。

また、訪問歯科のスケジュール管理には向き不向きがあります。院長が自分で組むと、診療との両立で無理が出やすい。基本的にはスタッフが調整を担い、院長は管理と方針判断に回る方が合理的です。ただ、すでにスタッフへ任せていてうまくいっていないなら、別の視点を入れると整理しやすくなります。

いずれにしても、「誰が組んでいるか」より先に、「設計が受動的になっていないか」を見ることが出発点です。

先生の医院では、当てはまることはありますか?

  • 「いつがいいですか?」と聞くことから始めているスケジュール組みが多い
  • ルートの非効率を感じているが、ご家族などのキーパーソンや施設の制約で変えられないと思っている
  • 空きが出たとき、原因より先に「次の患者さんを探す」ことに意識が向く
  • 入院中の患者さんの状況を、連絡が来るまで確認していない
  • 中空き枠や遠方往復を「仕方ない」で放置している
  • スケジュール管理を、院長か特定のスタッフ一人で担っている

1つでも当てはまる場合、見直しの起点が見つかる可能性があります。

見直しの方向性——「直す」ではなく「設計を更新する」

スケジュールの問題は、「誰かが悪かった」という視点では動きません。過去を責めるより、「今の設計をどう更新するか」という視点で考えた方が、チームの空気を崩さず改善に向かいやすくなります。

「直す」という言葉は、どうしても誰かのミスを含みます。一方で「設計を更新する」と言うと、スタッフも一緒に考える側へ入りやすい。訪問のスケジュール管理は試行錯誤が前提ですから、この言い換えには意味があります。

院長が「今の状態を一緒に整理したい」と声をかけるだけで、スタッフ側から見えている問題が出てくることもあります。スケジュールの問題は、院長一人で抱えるより、チームで見えるものをそろえて初めて動き出します。

まとめ

訪問歯科のスケジュールが崩れ始めたとき、最初に見直すべきは「動き方」ではなく「設計の受動性」です。

  • 「いつがいいですか?」から始まる受動的な組み方
  • 情報の更新が止まることで生じる空きと中断
  • 中空きや遠方往復を「仕方ない」で放置していないか
  • スタッフと院長で気になるポイントが違うこと

これらは、特定のスタッフの能力の問題というより、スケジュール設計の結果です。設計を更新するという視点に切り替えるだけで、改善の入口は見えやすくなります。