スタッフと相談しながらルートを組み直したのに、思うような改善につながらない。そんな状況はないでしょうか。
こうした停滞が起きるのは、院長の工夫が足りないからでも、立地が悪いからでもなく、 改善できる非効率 と 割り切るべき非効率 を同じ熱量で扱ってしまっていることが、改善が進まない構造的な理由かもしれません。
私は訪問歯科の立ち上げから一定規模まで、実務と経営の両方に関わってきました。その経験から、ルート改善がうまく進む医院と止まりやすい医院の差を生む「優先順位の考え方」をお伝えします。
訪問歯科のルート改善で起きやすい2つの行き詰まり
ルート設計への向き合い方は、大きく2つのパターンに分かれます。どちらも一見もっともらしいのですが、偏ると止まりやすくなります。
目の前の非効率を全部改善しようとする
効率化への意識が高い院長ほど、移動ロスを放置しにくいものです。スタッフへ細かな調整を求めたり、患者さんや施設の都合による非効率性が生じている場面でも何とか変えたくなったりする。その気持ちはよくわかります。
ただ、改善難易度の高い条件に対してまで同じ熱量で向かうと、結果的に生まれやすくなるのは「スタッフとの摩擦」です。そして厄介なのは、その摩擦が「改善に前向きな職場づくり」ではなく、「また院長に細かく言われる」という空気に変わりやすいことです。
非効率を「仕方ない」で終わらせる
一方で、「遠いから仕方ない」「今のままでも十分回れているから」と理由をつけて、改善の余地がある非効率性まで、見て見ぬふりをするパターンもあります。
この状態が続くと、スタッフの中でも非効率的な訪問診療が日常になります。本来変えられるはずのロスまで「こんなもの」として受け入れられ、いざ改善しようとしたときに、なぜそれを変える必要があるのかが共有されていない状態になります。
ルート設計で大切なのは「改善難易度」の見極め
この2つに共通しているのは、非効率の 改善難易度 を分けずに扱っていることです。
割り切るべき非効率
遠方の訪問先がぽつんと1件だけあり、その前後にも近隣患者さんがいない。こうした地理的条件による非効率は、すぐに改善しようとしない方がよいことがあります。
ここへ時間と労力をかけても、得られる改善は限られます。むしろ無理に詰めようとすると、スタッフや患者さんとの関係に余計な負荷をかけてしまいます。
また、「患者数が増えれば自然と効率化するだろう」と考えがちですが、訪問圏域は広く、患者さんが点在すればむしろ複雑さは増します。増えれば解決するとは限らないことも悩ましいところです。
追求すべき非効率
一方で、地理的制約が少ない範囲での移動ロス、ルートの組み方の癖などによるムダなどは、工夫で変えられる余地があります。
相談の場でよく聞くのは、「移動時間はこんなものだと思っていた」という言葉です。一度「普通」になってしまうと、問いが止まります。問いが止まった状態で月日が経つと、改善コストだけが膨らみます。
先生の医院のルートを振り返るチェックリスト
- 移動時間だけで1日のかなりの時間が占められている
- 「遠いから仕方ない」で思考が止まっている訪問先が複数ある
- スタッフが現在のスケジュールを「普通」として疑っていない
- ルート見直しの話をスタッフとしたことがない
- 患者数は増えたのに、1日の診療件数が頭打ちになっている
もし思い当たる項目があれば、以下の内容が少しお役に立てるかもしれません。
改善を前に進める2つの問い
ルート改善の感覚を保つために有効なのは、次のような問いを習慣として持つことです。
- もう1件診療できたら、毎月の積み重ねはどう変わるか
- 移動時間を少し短縮できたら、スタッフの負担や医院の事務時間はどう変わるか
- この非効率の裏に、仕方のない理由は本当にあるのか
私が前職で複数の歯科医師が関わる訪問歯科チームを管理していた頃も、こうした問いを常に持っていました。診療効率が高まることは医院の利益に直結しますが、それだけでなく、スタッフが無理なく働き続けられる環境づくりにもつながるからです。
ただし、「改善できる非効率」と「割り切る非効率」の区別は、経験の中で育つ感覚でもあります。患者数、施設数、地理、スタッフ配置、チームの雰囲気。複数の条件を同時に見ないといけないため、院長一人の感覚だけで判断し続けると、知らないうちにスタッフへの負荷が積み上がることもあるかもしれません。
まとめ
訪問歯科のルート設計では、非効率を全部潰そうとすることも、全部を仕方ないで済ませることも、どちらもうまくいきません。
大切なのは、改善難易度が高いものは一度割り切り、工夫で変えられるものから先に着手することです。その区別があるだけで、スタッフとの不要な摩擦を減らしながら改善を進めやすくなります。
「もう1件」「あと少し早く」という視点を、医療人としての共通の軸でスタッフと持てるかどうか。その積み重ねが、診療体制の安定と収益改善につながっていきます。
スケジュール全体の構造的な見直しについては、こちらもあわせてご覧ください。
→ 訪問歯科のスケジュールが崩れ始めたとき、最初に見直すべきこと
先生の医院の診療スケジュールや訪問ルートに課題感や悩みがあるようでしたら、無料相談で状況をお聞かせください。スタッフマネジメントの視点も含めて、整理の具体的な方向性を整理します。