令和8年改定は、訪問診療、高齢者の口腔機能管理、障害者歯科の麻酔・鎮静など、確認する項目が複数に分かれています。
この記事では、訪問歯科の院長がまず見るべき「算定」「書類」「体制」の論点に絞って整理します。網羅表ではなく、自院の運用確認に使うための記事です。
この記事で確認できること
- 訪問診療・在宅管理で確認する点数と減算
- 高齢者の口腔機能管理で必要になる検査・計画・記録
- 障害者歯科の麻酔・鎮静で見ておく体制
出典は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」掲載資料です。2026年7月6日に、0619訂正後資料と0626疑義解釈までの掲載状況を確認しています。最終的な算定は、原典と地方厚生局の届出状況を確認してください。
1. 訪問診療・在宅管理の変更点
歯科訪問診療料:大規模施設訪問は届出・施設基準が採算に影響し得る
令和8年の歯科訪問診療料は、単一建物の人数により次の点数で整理されています。確認すべき中心は、歯科訪問診療4・5に加わる注7の減算です。
| 区分 | 対象 | 点数 |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療1 | 1人(単一建物) | 1,100点 |
| 歯科訪問診療2 | 同一建物2〜3人 | 410点 |
| 歯科訪問診療3 | 同一建物4〜9人 | 310点 |
| 歯科訪問診療4 | 同一建物10〜19人 | 160点 |
| 歯科訪問診療5 | 同一建物20人以上 | 95点 |
今回とくに確認したいのは、「注7」の扱いです。ここが大規模施設を回る訪問歯科では採算に影響し得ます。
- 何が変わったか :歯科訪問診療 4・5 (同一建物に同一日10人以上/20人以上を診るケース)について、 在宅療養支援歯科診療所1・2、または在宅療養支援歯科病院の届出がなく、別に定める施設基準も満たさない医療機関 は、 所定点数(および注6の点数)に対する減算を確認します。
- 誰に効くか :大きな施設をまとめて多数まわっているが、在宅療養支援歯科診療所(ざっくり言うと"訪問に強い診療所"としての国の届出)を取っていない医院。同じ訪問でも単価に大きく影響する可能性があります。
- 注意点 :自院が在宅療養支援歯科診療所の届出をしているか、要件を満たせるかを一度確認しておくこと。届出の有無が、大規模施設訪問の採算確認の重要な観点になりました。
なお、著しく歯科診療が困難な方への歯科診療特別対応加算1・2・3は、175点/250点/500点です。今回の障害者歯科の確認ポイントは、特別対応加算そのものよりも、麻酔・鎮静の評価と施設基準にあります。
在宅療養管理料・在宅口腔リハ:令和8年の点数と併算定の整理
- 歯科疾患在宅療養管理料 (在支診1=340点/在支診2=230点/在支歯科病院=340点/それ以外=200点):在宅歯科医療情報連携加算(月1回100点)について「在宅患者連携指導料(C007)とは併せて算定できない」という整理があります。
- 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 (10歯未満400点/10〜20歯未満500点/20歯以上600点):あわせて算定できない処置の一覧が、歯周病処置の再編にあわせて更新されています。
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料:枝番が増え、歯科衛生士でも実施可能に
- 何が変わったか :枝番に 「4」(100点)が新設 され、1〜4のいずれも100点に。さらに、 これまで歯科医師のみだった実施を、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士でも行えるようになりました 。
- 対象 :他院に入院中(1)/介護保険施設等に入所中(2)/障害児入所施設等に入所中(3)の患者などについて、入院・入所先の栄養サポートチーム等の一員として関わり、口腔機能評価に基づく指導を行った場合(月1回)。
- 注意点 :歯科衛生士の活用余地が広がったので、訪問のマンパワー設計を見直す好機です。
2. 高齢者の口腔機能管理——「検査して、管理する」流れに整理された
令和8年改定で高齢者歯科の中心になるのが、 口腔機能低下症の管理 です。今回、「検査で評価し、その評価に基づいて管理する」という流れがはっきり整理されました。
口腔機能管理料:「90点/50点」の分岐を確認する
- 確認すること :口腔機能管理料は、管理料1(90点)と管理料2(50点)に分かれています。
| 区分 | 点数 | 算定の条件 |
|---|---|---|
| 口腔機能管理料1 | 90点 | 下記いずれかの 検査を実施 した口腔機能低下症の患者を管理する場合 |
| 口腔機能管理料2 | 50点 | 検査を実施していない口腔機能低下症の患者を管理する場合 |
- 誰に : 50歳以上 で、歯の喪失・加齢・全身疾患等により、 関係学会の診断基準で「口腔機能低下症」と診断された患者 。
- 何回 :月1回。
- 要件(ここが大事) :口腔機能の評価と管理計画を作成し、 計画を文書で提供してその写しを診療録に添付 すること。管理内容も診療録に記載します。算定にあたっては関係学会の「口腔機能低下症に関する基本的な考え方」(令和8年3月)を参考にします。
- 管理料1(90点)の検査要件 :次のいずれかを実施していること。
- 口腔細菌定量検査2(D002-6)
- 咀嚼能力検査1(D011-2)
- 咬合圧検査1(D011-3)
- 口腔粘膜湿潤度検査(D011-5)
- 舌圧検査(D012)
その検査側も算定しやすくなった(緩和+新設)
| 検査 | 点数 | 令和8年改定での変化 |
|---|---|---|
| 咀嚼能力検査(D011-2) | 140点 | 点数は据え置き。診断目的・3月に1回の算定要件を確認 |
| 咬合圧検査(D011-3) | 130点 | 点数は据え置き。診断目的・3月に1回の算定要件を確認 |
| 口腔粘膜湿潤度検査(D011-5) | 130点 | 新設。加齢等による口腔乾燥の評価に |
| 舌圧検査(D012) | 140点 | 変更なし(据え置き) |
- 何が大きいか :咀嚼能力検査1・咬合圧検査1は、令和8年資料では診断目的・3月に1回の算定要件として整理されています。届出の有無だけでなく、対象患者、検査目的、継続管理の記録を確認することが実務上のポイントです。
- 算定の流れ :いずれの検査も「問診・口腔内所見等から加齢等による口腔機能低下が疑われる患者に、 口腔機能低下症の診断を目的 として」実施し、診断後は管理料(口腔機能管理料など)を算定して継続管理している場合に 3月に1回 算定します。
- 新設の口腔粘膜湿潤度検査 は、舌背部の粘膜の湿り気を機器で数値化する検査です。加齢等による口腔機能低下症の診断目的に加え、放射線治療・化学療法による口腔乾燥の患者にも(3月に1回)使えます。
口腔機能実地指導料(新設・46点)——歯科衛生士の指導を評価
- 何が変わったか : 口腔機能実地指導料(46点)が新設 されました。
- 誰が :口腔機能発達不全症・口腔機能低下症の実地指導の 研修を受講した歯科衛生士 が、主治の歯科医師の指示を受けて指導した場合。
- 対象 :口腔機能の発達不全を有する患者(正常な口腔機能の獲得が目的)/口腔機能の低下を有する患者(回復・維持向上が目的)。後者は高齢者が中心です。
- 要件 :指導内容・医療機関名・歯科医師名・指導した歯科衛生士名を記した文書を提供(初回時、その後も6月に1回以上)。指示内容の要点は診療録に記載します。
回復期等口腔機能管理(病院連携)——R8では計画変更時の評価が加わった
療養病棟・回復期リハ病棟・地域包括ケア病棟の患者について、リハ等を行う医療機関からの依頼で口腔機能を管理する 回復期等口腔機能管理計画策定料 に、 「策定料2(150点)」が新設 されました(患者の状態変化で計画を変更した場合、患者1人につき1回)。策定料1は300点、回復期等口腔機能管理料(200点)は据え置きです。
(補足)回復期等の口腔機能管理そのものは令和8年改定より前から設けられている枠組みで、今回はその一部手直しです。「丸ごと新設」ではない点に注意してください。
3. 障害者歯科——麻酔・鎮静の評価が広がった
協力が得られにくい患者さんの治療では、鎮静や麻酔が欠かせません。令和8年改定では、 この麻酔・鎮静の評価が体系的に整理・拡充 されました。障害者歯科に取り組む医院にとって、今回の一番のトピックです。
歯科麻酔管理料:1(750点)/2(600点)で確認する
- 確認すること :歯科麻酔管理料は、管理料1(750点)と管理料2(600点)に分かれています。
- 管理料1(750点) :全身麻酔(声門上器具・気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)を行った場合の管理。
- 管理料2(600点・新設) : 吸入鎮静法・静脈内鎮静法や、下記の歯科吸入麻酔・歯科静脈麻酔(K005・K006)を行った場合の管理 。つまり「鎮静の管理」が新たに点数化されました。
- 要件 :いずれも施設基準の届出が必要で、届け出た歯科麻酔担当の歯科医師が麻酔前後の診察を行うこと。無床診療所では病院との連携体制を確保し、患者へ緊急時対応の文書を提供します。
歯科吸入麻酔又は歯科静脈麻酔(K005・K006)——令和8年で確認したい区分
意識消失を伴う鎮静・麻酔を、実施時間、気道管理、歯科麻酔科医の関与で確認する区分です。
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| K005(Ⅰ) | 意識消失を伴う吸入/静脈麻酔(10分未満) | 120点 |
| K005(Ⅰ) | 同(10分以上20分未満) | 310点 |
| K006(Ⅱ)1 | 気道管理を要する麻酔20分以上・歯科麻酔科医が専従 | 2,600点 |
| K006(Ⅱ)2 | 同・歯科麻酔科医の指導下で専従 | 1,700点 |
| K006(Ⅱ)3 | 同・専従で実施 | 900点 |
| K006(Ⅱ)4 | 同・上記以外 | 600点 |
- K005(Ⅰ) :吸入麻酔または静脈麻酔で意識消失を伴うものを、麻酔下で検査・処置・手術等を行った場合。実施時間(10分未満/10〜20分未満)で区分します。
- K006(Ⅱ) :意識消失を伴い、かつ気道確保について管理を要するもの(声門上器具・気管挿管によるものは除く)を20分以上実施した場合。歯科麻酔科医の関与の度合いで4段階に分かれ、K006の「1」「2」は施設基準を満たす医療機関の歯科麻酔科医が要件です。
- 共通の注意点 :いずれも安全管理が前提で、麻酔を担当する歯科医師とは別に、患者の監視に専念する歯科医師の下で行います。K006には麻酔管理時間加算(2時間超で30分ごと)や幼児加算(3〜6歳)もあります。 施設基準の届出が必要 なため、まずは自院で算定できる体制かの確認から始めてください。
歯科診療特別対応加算は175点/250点/500点を確認
障害者歯科の基本となる歯科診療特別対応加算1・2・3は、175点/250点/500点です。今回の障害者歯科で実務上確認したいのは、特別対応加算そのものよりも、麻酔・鎮静(K004管理料2・K005・K006)側の評価と体制です。
まとめ
令和8年改定の訪問・高齢者・障害者歯科は、「大きく点数が動いた」というより、 要件と算定の組み立てが変わった改定 です。
- 訪問 :令和8年の歯科訪問診療料は、人数区分ごとの点数と注7の減算を確認します。在宅療養支援歯科診療所等の届出や注7の施設基準が、大規模施設訪問の採算を分けます。
- 高齢者 :口腔機能管理料は「検査して90点/検査なしで50点」を軸に確認します。咀嚼能力検査1・咬合圧検査1は、対象患者、検査目的、3月に1回の算定要件を記録運用まで含めて見ます。
- 障害者 :鎮静・麻酔の評価が拡充。自院でどこまで算定できる体制かを確認しておきましょう。
改定対応は、点数を追うだけなら情報を集めれば足ります。けれども「自院の届出状況・人員体制・患者層に照らして、どの算定を伸ばし、どの体制を整えるか」まで落とし込もうとすると、複数の要素を同時に動かす必要があり、院長お一人で設計するには構造的に難しい領域です。
先生の医院では、在宅療養支援歯科診療所の届出や口腔機能管理の体制は、今回の改定に合った形になっているでしょうか。
訪問・高齢者・障害者歯科の体制づくりや算定の組み立てが気になる場合は、まず無料相談で状況をお聞かせください。